○佐井村むらづくり基本条例
平成19年6月22日
条例第14号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第3条)
第2章 むらづくりの基本理念と目標(第4条・第5条)
第3章 むらづくりの基本原則(第6条・第7条)
第4章 住民の権利、役割及び責務(第8条・第9条)
第5章 議会の役割と責務(第10条・第11条)
第6章 村長及び執行機関の役割と責務(第12条―第17条)
第7章 むらづくりの計画策定(第18条・第19条)
第8章 情報(第20条―第24条)
第9章 評価(第25条・第26条)
第10章 財政(第27条―第32条)
第11章 住民投票制度(第33条)
第12章 連携(第34条―第37条)
第13章 条例制定等の手続(第38条)
第14章 この条例の検討及び見直し(第39条)
附則
前文
本州の最北端下北半島の西側に位置し、津軽海峡を隔てて北海道の山々が眼前に広がり、あふれる緑、マリンブルー、清らかな川に囲まれた自然豊かなところ、そこがわたしたちの住む佐井村です。
夏の太陽に美しく照らし出された自然の美しさとは裏腹に、冬の人を寄せ付けないほどの厳しい環境の中で、雄大な自然は俗化されずに息づいています。秘境「仏ヶ浦」。見渡す限りの白緑色の奇岩怪石は、今なお悠然と立ちつくしています。
さて、佐井村は、藩政時代からヒバの積出港として、また、蝦夷地渡船の港として栄えてきました。その輝かしい伝統、歴史、文化は今なお村に息づいています。
その歴史を振り返るとき、日露戦争の際、手製の赤十字旗を翻し、ロシア兵を含む多くの負傷兵を治療したという秘話で知られる村出身の医師、故三上剛太郎氏の博愛精神に思いを致し、住民がお互いに助け合い、協力しあう心豊かなむらづくりを進めるため、「赤十字の里づくり」構想を展開しています。
21世紀を迎えた今日、わたしたち住民、議会及び村は、先人が築いてきた歴史と文化を引き継ぎ、住民一人ひとりを大切にし、みんなで協力し合い、助け合う協働のむらづくりを行います。佐井村は人口3,000人弱の小さな村です。しかし、小さいからこそ、住民一人ひとりの顔が見えます。住民が主役のきめ細やかなむらづくりができます。
このような認識の下に、わたしたち住民、議会及び村は、顔の見える規模の自治体としての利点を生かし、むらづくりの基本理念と目標を共有し、協働のむらづくりを進めるため、この条例を制定します。
第1章 総則
(趣旨)
第1条 この条例は、佐井村のむらづくりに関する基本的な事項を定めるとともに、むらづくりにおける住民の権利と責任を明らかにし、住民がむらづくりの担い手として、議会や村とともにむらづくりを推進するための基本的な事項を定めるものとする。
(1) 住民とは、村内に在住する個人及び村内に事務所を有する法人その他の団体をいう。
(2) 村とは、議会を除く執行機関をいう。
(3) 協働とは、佐井村を構成する住民、議会及び村が、それぞれの果たすべき役割と責務を自覚し、相互に助け合い協力することをいう。
(4) 参画とは、村が実施する施策や事業等の計画策定、実施、計画等の各段階に住民が参加することをいう。
(5) コミュニティとは、お互いに助け合い、心豊かな生活を送ることを目的とし、自主的に結ばれた地域内の住民組織及び集団をいう。
(条例の位置付け)
第3条 村は、条例、規則又は規程を定めるときは、この条例を最大限に尊重しなければならない。
第2章 むらづくりの基本理念と目標
(むらづくりの基本理念)
第4条 住民は、一人ひとりが自ら考え、行動する中で、誰もが、むらづくりを楽しみ、住民が主役となったむらづくりを基本に進めなければならない。
2 むらづくりは、住民、議会及び村がそれぞれの果たすべき責任と役割を分担し、協働することを基本とする。
(むらづくりの基本目標)
第5条 住民、議会及び村は、むらづくりの基本理念に基づき、それぞれに協働し、次の各号に掲げるむらづくりの推進に努めるものとする。
(1) 環境にやさしく、豊かな自然環境と快適な住環境を大切にするむらづくり
(2) 先人たちが築いてきた歴史と文化を大切にするむらづくり
(3) 福祉を大切にした、温かみと安心感が漂うむらづくり
(4) 都市住民との交流や地域資源を活かし、経済力を高めるむらづくり
(5) 豊かな水産資源のブランド化を推進し、生産性の高い1次産業を発展させるむらづくり
(6) 次世代を担う青少年が夢と希望を抱き、元気に活動するむらづくり
第3章 むらづくりの基本原則
(情報共有の原則)
第6条 むらづくりは、自らが考え行動するという自治の理念を実現するため、住民、議会及び村は、むらづくりに関する情報を共有することを基本に進めなければならない。
(協働の原則)
第7条 住民、議会及び村は、協働してむらづくりの基本理念と基本目標の実現に努めなければならない。
第4章 住民の権利、役割及び責務
(住民の権利)
第8条 住民は、むらづくりの主体として、むらづくりに参画する権利を有する。
2 住民は、村が保有する情報について、その提供を受け、自ら取得する権利を有する。
3 住民は、地方自治法(昭和22年法律第67号)の定めるところにより、行政サービスを等しく受ける権利、選挙権、被選挙権、条例の制定改廃請求権、事務の監査請求権等を有する。
(住民の役割と責務)
第9条 住民は、むらづくりの主体であることを認識し、積極的にむらづくりに参画するとともに、住民相互の連携に努める。
2 住民は、総合的視点に立ち、むらづくりの活動において自らの発言と行動に責任を持たなければならない。
3 住民は、むらづくりを支える自主的、自立的なコミュニティの役割を認識し、守り育てるように努める。
第5章 議会の役割と責務
(議会の役割と責務)
第10条 議会は、村の議決機関としての責任を認識し、行政の監視機能を高めるとともに、未来に向けたむらづくりの展望を持ち、住民の生活水準の向上に努めなければならない。
2 議会は、議会改革に努め、情報の公開と住民の参加を推進する。
(議員の責務)
第11条 議員は、住民の代表者として議事に参加していることを自覚し、広く村民から意見を求め、審議能力及び政策提案能力の向上に努めなければならない。
第6章 村長及び執行機関の役割と責務
(村長の役割と責務)
第12条 村長は、住民の信託に応え、村政の代表者としてこの条例の基本理念を実現するため、公正かつ誠実に村政の執行に当たり、むらづくりの推進に努めなければならない。
2 村長は、むらづくりを推進するため人材の育成に努めなければならない。
3 村長は、住民との協働に必要な企画、調整能力を備えた村職員の養成に努めなければならない。
(執行機関の役割と責務)
第13条 村は、住民がむらづくりに参加する権利を保障するとともに、多様化、高度化する行政要望に適切に対応できる総合的な村政運営に努めなければならない。
2 村は、コミュニティの自主性及び自立性を尊重し、むらづくりにおける住民相互の連携が常に図られるよう努めなければならない。
(組織機構)
第14条 村は、むらづくりや住民の多様な行政要望に柔軟かつ迅速に対応でき、住民に分かりやすく機能的な組織機構の編成に努めなければならない。
(審議会等への参加)
第15条 村は、審査会、審議会、調査会その他の附属機関及びこれに類するものの委員には、公募による委員を加えるよう努めなければならない。
(説明・応答責任)
第16条 村は、村政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため、行政上の意思決定について、説明責任を負い、その内容及び過程を明らかにしなければならない。
2 村は、住民から意見、要望、苦情等があったときは、速やかに事実関係を調査し、誠実に応答しなければならない。
3 村は、前2項の規定による応答を迅速かつ適切に行うため、対応記録を作成する。
(意見・要望、苦情等への対応のための機関)
第17条 村は、住民の権利の保護を図り、村の行政執行により住民が受ける不利益な扱いを簡易かつ迅速に解消させるため、不利益救済のための機関を置くことができる。
第7章 むらづくりの計画策定
(総合計画等の策定)
第18条 村は、計画的な村政運営を図るため、基本構想(地域における総合的かつ計画的な行政の運営を図るための構想をいう。以下同じ。)、基本計画(以下「総合計画」という。)及び実施計画をこの条例の目的及び趣旨にのっとり策定する。
2 基本構想を新たに策定し、変更し、又は廃止するときは、議会の議決を経なければならない。
3 第1項で定めた実施計画は、毎年度見直しを行い、その進行管理に努めなければならない。
(計画策定への参画)
第19条 村は、総合計画に定める重要な計画策定に着手しようとするときは、あらかじめ次の事項を公表し、意見を求めるものとする。
(1) 計画の概要
(2) 計画策定の日程
(3) 予定する住民参加の手法
(4) その他必要とされる事項
2 村は、前項の計画を決定しようとするときは、あらかじめ計画案を公表し、意見を求めるものとする。
3 村は、前2項の規定により提出された意見について、採否の結果及びその理由を付して公表しなければならない。
第8章 情報
(情報共有の推進)
第20条 村は、むらづくりに関する情報は住民共有の財産であるとの認識に立ち、情報公開に努めなければならない。
(意思決定の明確化)
第21条 村は、むらづくりに関する意思形成過程を明らかにすることにより、むらづくりの内容が住民に理解されるよう努めなければならない。
(情報共有のための制度)
第22条 村は、情報共有を進めるため、次に掲げる制度を基幹に、これらの制度が総合的な体系をなすように努めるものとする。
(1) 村の仕事に関する村の情報を分かりやすく提供する制度
(2) 村の仕事に関する村の会議を公開する制度
(3) 村の保有する文書その他の記録を請求に基づき公開する制度
(4) 住民の意見、提言等がむらづくりに反映される制度
(情報の収集及び管理)
第23条 村は、むらづくりに関する情報を正確かつ適正に収集し、速やかにこれを提供できるよう統一された基準により整理し、保存しなければならない。
(個人情報の保護)
第24条 村は、個人の権利及び利害が侵害されることのないよう個人情報の収集、利用、提供、管理等について必要な措置を講じなければならない。
第9章 評価
(評価の実施)
第25条 村は、むらづくりの目標に照らし、取組の有効性、効率性等について評価を実施する。
2 評価に当たっては、外部評価も含め最もふさわしい方法を採用する。
3 村は、評価の結果を施策等に反映するよう努めなければならない。
(結果の公表)
第26条 村は、むらづくりの評価の結果について、分かりやすい形で住民に公表する。
第10章 財政
(総則)
第27条 村長は、予算の編成及び執行に当たっては、総合計画を踏まえて行わなければならない。
(予算編成)
第28条 村長は、予算の編成に当たっては、予算に関する説明書の内容の充実を図るとともに、住民が予算を具体的に把握できるよう十分な情報の提供に努めなければならない。
2 前項の規定による情報の提供は、村の財政状況、予算の編成過程及び重点施策が明らかになるよう分かりやすい方法で行うものとする。
(予算執行)
第29条 村長は、むらづくりに関する事業の予定及び進行状況が明らかになるよう、予算の執行計画を定めるものとする。
(決算)
第30条 村長は、決算にかかわる村の主要な施策の成果を説明する書類その他決算に関する書類を作成しようとするときは、住民や議会がそれらの施策の評価をするのに役立つものとなるよう配慮しなければならない。
(財産管理)
第31条 村長は、村の財産の保有状況を明らかにし、財産の適正な管理及び効率的な運用を図るため、財産の管理計画を定めるものとする。
3 財産の取得、管理及び処分は、法令、条例及び佐井村財務規則(昭和57年佐井村規則第9号)の定めによるほか、第1項の管理計画に従って進めなければならない。
(財政状況の公表)
第32条 村長は、予算の執行状況並びに財産、地方債及び一時借入金の現在高その他財政に関する状況(以下「財政状況」という。)の公表に当たっては、別に条例で定める事項の概要を示すとともに、財政状況に対する村長の見解を住民に示さなければならない。
第11章 住民投票制度
(住民投票の実施)
第33条 村は、佐井村にかかわる重要事項について、直接、住民の意思を確認するため、住民投票制度を設けることができる。
2 住民投票を行うときは、村長は、住民投票の目的を事前に明らかにし、その投票結果を尊重するものとする。
3 住民投票の制度及び実施に関し必要な事項は、それぞれの事案に応じ、別に条例で定める。
第12章 連携
(村外の人々との連携)
第34条 住民、議会及び村は、社会、経済、文化、学術、スポーツ、環境等に関する取組を通じて、村外の人々の知恵や意見をむらづくりに活用するように努める。
(近隣自治体との連携)
第35条 住民、議会及び村は、近隣自治体との情報共有と相互理解の下、連携してむらづくりを進めるものとする。
(広域連携)
第36条 住民、議会及び村は、他の自治体、国及びその他関係機関と連携し、むらづくりを進めるものとする。
(国際交流及び連携)
第37条 住民、議会及び村は、自治の確立と発展が国際的にも重要なものであることを認識し、むらづくりその他の各種分野における国際交流及び連携に努めるものとする。
第13章 条例制定等の手続
(条例制定等の手続)
第38条 村は、むらづくりに関する重要な条例を制定し、又は改廃しようとするときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、住民の参加を図り、又は住民に意見を求めなければならない。
(1) 関係法令及び条例等の制定改廃に基づくもので、その条例の制定改廃に政策的な判断を必要としない場合
(2) 用語の変更等簡易な改正で、実質的な変更を伴わない場合
(3) 前2号の規定に準じて条例の制定改廃の議案を提出する者(以下「提案者」という。)が住民の参加又は住民に意見を求めることを不要と認めた場合
2 提案者は、前項に規定する住民の参加等の有無(無のときはその理由を含む。)及び状況に関する事項を付して、議案を提出しなければならない。
第14章 この条例の検討及び見直し
附則
この条例は、平成19年7月1日から施行する。
附則(平成24年条例第23号)
この条例は、平成25年4月1日から施行する。